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紫色の月光

紫色の月光

第一話「目覚めしリーサルウェポン」

第一話「目覚めしリーサルウェポン」



世界地図で言うと、オーストラリア大陸の端の方に、ボロ工場がある。
それは屋根もまともについていないし、壁も穴だらけ。しかもゴミの山に囲まれているためか、ひどい悪臭が漂う。こんな所にわざわざ住もうとする人間はいない。
だが、この最悪の空間と言っても良い場所に二つの人影があった。

一人は茶髪の男で世間からは「怪盗 シェル」と呼ばれている仮面をつけた、俗に言う謎の怪盗A。
もう一人は青髪で青の瞳が目立つ男で、世間からは「怪盗 イオ」と呼ばれている、俗に言う謎の怪盗B。

「・・・・・・マーティオ。一つ聞いていいか?」

「何だ? エリック」

青髪の男――――マーティオは喜怒哀楽が読み取れないほどの無表情な顔で後ろにいるエリックに振り返る。
するとエリックは溜息。

「何でこんな所にわざわざ来たんだ? お前さん、普段は趣味で銃火器やダイナマイトを作っているだろう。それなのにこんな所に来て何があるってんだよ」

「簡単な事だ。ここに何か使えるものはないかと探しに来たのだ」

マーティオは感情が全く読み取れない表情のまま、当然だと言わんばかりにエリックに言った。

「幸い、奇妙なニオイのおかげで人が寄らん。今なら誰にも見つかることなく使えそうな物を入手できると言う事だ」

マーティオは言い終えると同時に、早速悪臭を放つゴミの山をあさり始めた。
その様子を見たエリックはマーティオの隣で、悪臭に意識を奪われそうになりながらも使えそうなものを探す。

「ところでマーティオ。お前はこの凄まじいニオイの中、何故そんなに平然としていられるんだ?」

「簡単な話だ。それは俺がこのニオイの中、平気でいられるから平然と作業できるのだ」

「・・・・・・わけ分からん・・・・」


数時間後

結局、ゴミの山からは使えそうなものは無かった。
エリックはゴミの悪臭によって気絶してしまっていたため、マーティオが彼を引きずりながら『協力者』がいるところに向かう。その途中、エリックは何度か向かって来る車に轢かれそうになったのだが、その前にマーティオがその車を片付けていった。

「・・・・全く。無駄に手榴弾を使わせてくれる・・・・」

マーティオは灼熱の太陽が唸っている中、さらりと恐ろしい事を言った。
その表情には、やはり感情と言うものが見られないのだが、口調からして、多少は苛立っていたようである。




オーストラリアのとあるカフェで、一人の中年男は新聞を読んでいた。
男は金髪のボサボサヘアーで、見るからに安っぽいコートを着ている。そして何故か顔に包帯を巻かれていた。それも鼻が重点的に巻かれていた。

男の名前は、ネルソン・サンダーソン。警察をやっている。因みに警部だ。

だが、ここのところ失敗ばかりでいつも「獲物」を逃がしてしまう。
そして、そのたびに給料が減って行く。
部下からの信頼が厚く、戦闘技術も申し分ない。いわゆる「超熱血警部」なのだが、毎日のように怪盗二人に逃げられているのが彼の巨大な悩みである。

果たしてこのままでいいのだろうか? 
アメリカに残してきた妻のメアリーと娘のクリスはきちんと生活できているのだろうか?
と言うかこんな風に家族に心配をかけてしまうような俺は人間として生きていいのだろうか?
そもそも俺は本当に人間なのか?
と言う事は、俺はアウストラロピテクスよりも頭が悪いのかも・・・と言う事は俺は猿か? 猿なんだな? 猿なんだろう?

「俺は猿だぁぁぁぁぁぁぁぁっ―――――――――!!!!!!!!」

「しっかりしてください、警部!! 何をいきなり退化しちゃいましたよ宣言しちゃってるんですか!?」

どう連鎖していけばそうなるのか分からないネルソンの思考回路を止めにかかったのは彼の部下であるジョン・ハイマン刑事だ。
ジョンは、ネルソンの部下になってかれこれ2年経つ。
おかげでネルソンの暴走(?)を止める役は自動的に彼になるのである。

「す、すまんなジョン。最近どうも疲れているみたいだ」

ネルソンは深呼吸をしてからコーヒーを口に含んだ。
ジョンはこの光景を見て、自分もコーヒーを飲む。

ジョンはコーヒーを飲み終えてからネルソンのほうを見ると、ネルソンが今日の朝刊を見ながら肩を震わせていた。
そしていきなり立ち上がり、ジョンの首をしめ、上下に揺さぶる。

「うおおおおおおおおお!!!!! 俺は悔しいぞ!! 毎回毎回あの怪盗二人組みに逃げられては給料を下げられ、家族にも会えない!! 挙句の果てには自分をアウストラロピテクス以下だと認めてしまったぁぁぁぁっ!!!」

「け・・・・警部・・・・はな・・・して・・・・ぐるじい・・・・・」

ネルソンはその一言で我に帰ると、目の前ではジョンが泡を吹かしながらその場に崩れ落ちていった。
それを見たネルソンはテーブルの向こうにいるジョンの下に駆け寄る。たったの数歩の距離なのだが、血相を変えてダッシュした事から部下を大事にしていっている事がわかる。
だが、それをも上回るネルソンの宇宙的な思考回路と想像力が悲劇を生んでいっているのは本人には分かっていないようである。

「ジョン!! ジョン!! しっかりしろ!! ・・・・・・クッ・・・!! 一体誰が俺の大事な部下を!!」

この様子を店内で見ていた客と従業員は一斉にネルソンに突っ込んだ。

「お前だよ」


それからしばらくして、ジョンが目覚めた瞬間、ネルソンが首を吊ろうとしていたのは言うまでも無い。





「相も変わらず、お前さんは無表情じゃのう」

マーティオは目の前にいる老人に言われた一言に特に反応する事もなく、目がさめたら頭にいくつものたんこぶがあったエリックと共に辺りを見回した。

空間の広さは学校の体育館と同じ大きさで、白の壁に囲まれている。
しかし、何よりもこの空間の中で注目すべき物は目の前にある、槍と大鎌だった

「どうだ? ニック。ランスとサイズの状態は」

マーティオは目の前にいる老人、名前をニック・ニューエンと言う男に静かに尋ねた。

ニックは二人に協力している研究者だ。二人が怪盗として盗んだものはすべてニックによって一度調べられる。何故なら二人のターゲットとなっているのは全て「イシュ」が関連しているからだ。

前回盗み出した「エリシオンの涙」も勿論ニックによって調べられている。
調べられた結果、「エリシオンの涙」はただの宝石では無かった。
見た感じは普通の宝石なのだが、「中身」が違うのだ。
どこら辺が違うのかと言うと、一種の「古代技術」が宝石の中に詰まっていたのである。


宝石、「エリシオンの涙」とは一種の麻薬であった。
外見だけ見ていると、ただのキレイなサファイアにしか見えない。
だが、その内部には目には見えない強力な「麻薬」が存在する。それもかなりの量だ。
因みに、今まで二人が盗んできた「イシュ」関連の宝石、全部からそれが確認されている。
だが、ニックが言うにはこの麻薬は普通とは違う成分が含まれているらしい。
何が違うと言うのかは、今もニックが調べている最中だ。


「ランスとサイズなら、目の前にあるじゃろ? しかし、古代兵器とは凄いものじゃのう」

「凄いとはどういうことだ?」

エリックは目の前に立てられている槍と大鎌を見ながらニックに言う。

「この二つは、お前さんも知ってのとおり、古代の技術で作られた兵器じゃ。見つけた当時はそれこそボロボロで、誰にも修復出来ないと思っておったのじゃが・・・・驚異的な自己修復機能が付いておったようじゃ」

知ってのとおりと言われて、エリックとマーティオの二人は少し困惑する。実はこの二つの武器の事をよく知らないのだ。
初めてニックと出会ったとき、この空間には既にランスとサイズは存在していた。
だが、今、二人の目の前にあるような立派な代物ではなかった。
それが僅か1年で、まるで新品の電化製品のように光り輝くものとなっていたのだ。



街の中は民間人が大勢いる。
どういう訳かこの街は「イシュ」と言う組織があるにもかかわらず、見ただけでは平和な街に見える。
そんな街の中に人影が二つ。一つは黒髪で若い青年。先ほどまでカフェで意識を失っていたジョンだ。

「警部。これからどうしましょうか?」

先ほど、責任感の許容ゲージをオーバーしたために首吊り自殺を図ろうとしたネルソンに向けてジョンは言った。

「そうだなぁ・・・・・・・・・・・・・・」

ジョンはネルソンが何かを凝視しているのに気づいた。
彼はネルソンの視線の先にあるものを見てみる。

そこには、左手に赤い風船を6つほど持ったピエロがいた。
ネルソンはそのピエロを凝視したまま、その小さい脳みそで思考回路をフル回転させている。

数分後、思考がまとまったのか、ネルソンは妙に真剣な顔つきをしながらピエロに近づいていった。
ピエロはこちらに近づいてくるネルソンに気づいたが、逃げる気配は無い。
ネルソンはピエロから数メートルの位置で立ち止まると、いきなり拳銃を構えた。

「出やがったな! 宇宙人!!」

「へ?」

ピエロは目の前で意味不明なことを言い出したネルソンを呆然とした表情で見ていた。
それに対し、ネルソンは、

「そのどう見ても不自然な白い肌!! 怪しい服装、恐らくは宇宙服だろう!! そして極めつけはその風船だ!!」

ネルソンが言うと、ジョンを始めとしたその場にいる民間人が、ピエロが持っている赤い風船に視線を送る。

「その風船は、街を破壊するための爆弾に違いない!! やい! 宇宙人!! さっさとその風船爆弾を手放せぇ!!」

言い終えると同時に、ネルソンの後頭部に強烈な一撃が決まった。ジョンの突込みだ。
彼は後頭部を両手で押さえながら地面に倒れこんでいるネルソンを無視して、ピエロに土下座をしつつ言う。

「すみません!! この人は脳の大きさがアリ並しかありません。どうか、お許しをぉぉぉぉぉぉっ!!」

「・・・・・・・何故だ?」

「へ?」

ジョンはピエロが呟くように言った一言で、地面に張り付いていた頭を上げた。
すると、目の前には肩を震わせているピエロがいた。

「何故、この風船が爆弾だと分かったのだぁぁぁっ!!」

「えぇぇぇぇっ!!!? 嘘ぉぉぉっ!!」

流石に予想外の展開が起きてしまったためか、ジョンは風船爆弾を取り上げる前に大きく驚いてしまっていた。
すると、そんな彼の横で倒れていたネルソンが素早く立ち上がった。

「はっはっはっ! 見たか宇宙人! この俺の恐るべき超ウルトラミラクルスーパーデリシャスデンジャラススペクタルな『勘』の鋭さ!!」

「・・・警部・・・・いまいち凄さが伝わってきません。つーか意味わかりません。更に突っ込ませていただくならピエロは宇宙人じゃありません」

「ジョン。ならばここでお前に質問だ。・・・・・ピエロって何だ?」

「後でインターネットか辞典でも使って調べてください」

「あー・・・・すまん。インターネットって何だ?」

「・・・・・もういいです。自分で調べてください」

ジョンは思った。何故こんな人が警部になれたのだろうか、と。
今時はインターネットくらいは小学生を飛び越えて幼稚園児もやろうと思えばやっている時代だ。それなのに大の大人が何故に知らないのか。

(本当にこの人の下で働いてて大丈夫なのかな・・・・・?)

いや、とジョンは先ほどの思考に付け加えた。そもそもこの人を自由行動にさせていいものなのだろうか、と。
今回はたまたま相手が風船爆弾と言う、奇妙な物体を持っていたため何とかなったが、このままいけば減給だけじゃ済まされなくなる。しかも、下手したら自分も巻き添えを食らうのではないか、とも考える。

「何してるんだ! ジョン。早いとここのピエロとか言う奇妙な輩を逮捕するぞ!!」

「ハ、ハイ!!」

見れば、ピエロは全速力で逃げていた。それを二人の警官が追う。
ピエロはまだ風船爆弾を持っており、手から離そうとしない。

ネルソンは発砲できなかった。
下手に発砲したら周囲の民間人に被害が出るかもしれないし、もし風船に当たったりしたら爆発するからだ。何よりジョンが発砲しようと思ったら止めてきた。

そんな二人に追いかけられているピエロは、ダッシュしながら後ろに振り返り、風船爆弾を一つ手放した。どうやら、ネルソンたちへの威嚇であると同時に、逃げる隙を何とか作ろうかと思っているのだろう。
風船は天に昇っていき、近くの高層ビルの5階の位置で爆発した。




一室に爆破音が響いた。
エリックとニックは音と同時にやってきた揺れでバランスを崩し、その場に倒れこんだ。
マーティオは何故か揺るぎもしない。まるで接着剤でも使って足を固定しているかのようだ。

「爆発・・・『イシュ』のテロ行動か?」

マーティオは揺れが収まったと同時に言う。しかもこんな時でも無表情だ。
エリックとニックは半ばあきれた表情で立ち上がる。

「爆発があったのはこの部屋の数階下だな。ニック、俺は行くぞ」

そう言うと、マーティオはジャケットの中からショットガンを取り出し、出口に走った。

「お、俺も行く!! 何かあいつに任せておくと凄い不安だ!!」

マーティオが出口から出て行ったと同時にエリックも立ち上がる。
彼は大型ナイフを右手に持って出口に向かうが、

「ちょっと待て。どうせならこいつを持っていけ」

エリックはニックに声をかけられて、振り返ると目の前に槍が飛んできた。
彼は左手で槍の柄を掴み取ると、それが恐ろしく軽い事に気づいた。
自分の身体の一部として扱える。そんな気がする。

「古代兵器、『リーサル・ウェポン』の一つ。『リーサル・ランス』じゃ。修復記念として使ってやれ」

エリックはそれを聞いて気づいた。
この槍は先ほどまで部屋の中央で自動修復していた槍だった事に、だ。
彼は無意識に右手に持っていたナイフを床に落とした。
何故落としたのかは頭で分かっていた。必要が無いと感じたからだ。
この槍一本でテロリストを片付けことが出来る。直感でそう感じたのだ。

「ああ、行って来る」






ピエロは既に3つ目の風船爆弾を使い終えていた。残りの風船爆弾は3つ。
ネルソンは爆発する前に風船を片付けたが、ピエロはそれをあざ笑うかのように爆弾をビルの近くに浮かせていく。
ネルソンはそれを銃で破壊しようとしたが、

「止せ! アレは破壊するな!!」

声が聞こえたと同時に、ピエロの左手からいきなり鮮血が噴きだした。ピエロは左手に焼けるような衝撃が来たと同時に気づいた。自分は撃たれたのだと。
痛みが走る左手を押さえながら後ろを見ると、そこにはショットガンをこちらに構えた青い髪と青い瞳が印象的な男が立っていた。

マーティオはショットガンを降ろすと、ピエロの左手から落ちていく数本の針に目を向けた。

「やはりそうだったか。・・・・ふむ。ではそこの未確認生命体αよ」

一人で何かを納得するとマーティオは再びショットガンをピエロに向けた。しかもマーティオまでもがピエロがどんな職業なのか理解していなかったようだ。その無表情な顔は、何時の間にか冷酷な笑みに変わっている。
あまりの恐ろしい笑みにピエロや二人の警官は恐怖で顔を歪ませながら、数歩下がっていく。

「その風船爆弾。そのままだとただの風船なんだろう? 爆破方法はお前さんが針を投げて風船を破裂させた瞬間、どかん!! ってわけだ」

マーティオはショットガンの銃口をピエロではなく、風船の方に向けた。
この動作で彼が何をしようとしているのかはその場にいる全員が気づいた。

マーティオはピエロでは無く、彼がもっている風船爆弾をぶち抜こうとしているのである。つまり、マーティオはこの場でピエロごと風船を爆発させようとしているのだ。
そんな事をしたら最悪の場合、近くにいるマーティオや警官二人組み。果てには民間人まで巻き込むかもしれない。

だが、マーティオはそんな事は全く気にしないとでも言わんばかりに引き金をゆっくりと引―――――

「止めんかっ!!」

――――――けなかった。

ギリギリで駆けつけたエリックが、何時の間にか口に含んでいたガムをマーティオの顔面に吐き出したのだ。
その一撃(?)は見事にマーティオの左目にヒット。
悲鳴をあげながらも彼はガムを拭い、それを地面に捨ててから彼は地面に着地したエリックに振り向いた。
そして、そんな事があったにもかかわらず無表情な顔で、

「エリック。いきなり何をする」

「あのなぁ。爆破するのは別に構わないよ。だけどランスは長い間修復していて暴れれなかったんだ。少しは暴れさせてやってやれ」

マーティオは「仕方が無い」と言う顔でニックの部屋へと戻っていった。どうやら、ガムのことについては追及する気は無さそうだ。

だが、その分エリックは本気でピエロを倒すつもりだ。
既に左手をマーティオにぶち抜かれているが、それでも右手が残っているし、足も動ける。
つまり、ピエロは十分に戦闘が可能なのだ。
風船爆弾と言う恐ろしい武器を持っている男だ。恐らく、かなりの科学力がある組織が彼のバックについているのだろう。そしてエリックが知ってる限りでこんな物騒なものを作れる組織は一つしかなかった。

(・・・イシュ・・・・・)

嘗て、ただ一人の肉親とも言える父を殺した憎むべきエリックの最大の『敵』である。

そして今、彼の目の前には恐らくその『敵』の工作員であろう男がいる。しかもよく分からない格好で妙に白い肌だ。だが、例えどんな敵であろうとも彼は相手がイシュである限りは全力で戦うと言う決意をしていた。
その決意は消えることは無い。イシュを倒すまでは・・・・。


マーティオはニックの部屋へと戻っていっていた。
白の空間の中、ニックは鎌をマーティオの足元に向けて投げた。

鎌の矛先が床に突き刺さり、柄の部分がマーティオの右手の前にあった。まるで引き抜けとでも言わんばかりに、だ。

「足元に切っ先がやってくると言うのに反応無し・・・・・つまらんのぉ」

「自分の身体に害は無いと流れで感じ取ったまでの事だ。別に驚く事ではあるまい」

「多分、そんな事出来るのはお前さんくらいじゃろうな。少なくともエリックには出来ん」

マーティオは、今ごろ戦闘中であろうエリックは今頃くしゃみでもしてるに違いないと考えていた。
足元に突き刺さっている鎌については見ようともしていない。あまり興味を示していないのだ。

「さて、エリックにランスを預けたからサイズは流れで行けばお前さんが持つことになる。遠慮なく受け取るがよい」

ニックはマーティオの反応を待つ。普段から無表情なこの男が、この鎌を手にする事でどんな反応をするのか見てみたかったからだ。
だが、マーティオが見せた反応はニックの予想を覆すような物だった。

「・・・・・悪いが遠慮しておく」





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